AKIRA@日記

ソーシャルワークが出来る人間を目指す大学生。

壊れた家族を再生させる物語。その役割を果たすのが【ミッドナイト・バス】。

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 伊吹有喜さんの「ミッドナイト・バス」を読み終えました。

この作品は、新潟と東京間を走る深夜バスを中心にして、壊れた家族の関係性が再生されていくという物語です。

 

 この物語の舞台は、新潟と東京を舞台に展開されます。

新潟では、万代シティーバスセンターや萬代橋弥彦山など、地元民には嬉しい縁のある地名がたくさん現れます。だからこそ、新潟県民の方には絶対に読んでもらいたい作品です。特に、就職や進学をきっかけにして、地元から離れてしまった方には、ぜひ1度読んで頂きたいです。

 

 

正直に言えば、僕は深夜バスが怖い。

 正直な話、僕は深夜バス、高速バスという言葉を耳にすると少し怖いです。

大学1年、2年生の時は、金銭面に余裕が無い事もあり、深夜バスで地元・新潟に帰省する機会も多くありましたが、その手段は今はあまり使っていません。

 

それは昨年の1月に軽井沢で起きたスキーバス転落事故が、僕の中で恐怖という感情を湧き起こさせているのかもしれません。乗客の命が、深夜眠っている最中に、一瞬にして消えてしまう。真っ暗闇の中、誰にも気づかれる事なく、忽然と。そう考えると、僕は深夜バスの中で熟睡をした記憶がありません。

 

 どこか怯えながら、朝日がバスの中に差し込むのを期待しながら、明日が来る事を待ち望んで、深夜バスに乗車していました。でも、そんなネガティブなイメージが【ミッドナイト・バス】を読んで、少し変わった気がします。

 

 

時の経過を感じながら、目的地に到達する事の重要性

 新潟から東京に行く時、金銭面に余裕があれば、移動手段としては新幹線を用いるでしょう。高速バスや深夜バスで移動に5時間かけるならば、時間的短縮を少しでも図るために新幹線を選ぶはずです。

 

 でも、時の経過を感じながら目的地に到達することも大事なのではないか?

そう思わせてくれたのが「ミッドナイト・バス」です。

 

少しだけ、僕の話をさせて下さい。

僕は2月の下旬に宮崎に行きたかった。その理由は、あるJリーグクラブのキャンプを観に行きたかったからなのだけど、実際には実現出来ず。でも、宮崎にどうやって行こうかなと考えた時に、僕がお世話になっている60歳代の男性から寝台列車で宮崎に行ってみればいいと」言われたのを思い出しました。

 

その方は、僕に「新幹線を使っていくのではなく、寝台列車を使って、時の経過をじっくり感じながら目的地を目指してみるのも良いと思うよ。」と声をかけてくれました。

 

 そして、僕は【ミッドナイト・バス】を読み終えた時、この言葉の意味が分かりました。目的地まで最短で辿り着くだけが、正解ではないんだ。目的地までに紆余曲折を経て、色々と思いを巡らしながら、目的地に向かう時間もすごく大切な時間なんだ。

 

 

20年後。40歳代になったら、またもう1度読み直したい作品。

 家族がバラバラになりそうになってしまった。そんな経験は、どこの家族でもあると察します。主人公・高宮利一は年齢で言ったらもう50歳手前になります。

 

50歳になったら、きっと色々な事を抱えながら生きていくのだろう。

自分1人を養うだけでなく、自分の幸せだけを考えればいいのではなく、きっと色々な事を考え、悩みながら生活していく。

 

 僕はまだ20代前半です。だから、この主人公・利一さんが抱える悩みがダイレクトに身を持って共感出来るほど、人生を生きているわけではありません。でも、だからこそ、20年後にまた読み返してみたいなと思いました。

 

壊れかけてしまった家族を再生させる物語。

その役割を担うのが、新潟から東京、東京から新潟を結ぶ深夜バス。”時間の経過を感じながら”目的地に向かう事で、離れ離れになった関係を再生させてくれる「ミッドナイト・バス」。ぜひ、読んで見てください!

ミッドナイト・バス (文春文庫)

ミッドナイト・バス (文春文庫)