AKIRA@日記

ソーシャルワークが出来る人間を目指す大学生。

スロウハイツの神様(上)を読んだ感想!

 (注)自分の思いを吐露しているだけです。

 辻村深月さんの作品が大好きだ。

辻村深月さんの著作を少しでも読んだ事がある方なら、分かるだろう。

それは、辻村深月さんの作品に出てくるキャラクターは、それぞれの世界で生き続けているという事だ。

 そう。僕が初めて赤羽環に出会ったのは、「島はぼくらと」を読んだ時だ。

 

島はぼくらと (講談社文庫)

島はぼくらと (講談社文庫)

 

  

 僕は、車の免許を取りに、実家に帰省していた時、この本を読んでいた。

そして、この作品に赤羽環が登場する。その時は、彼女の事はそれほど強く注目をしていたわけではない。だが、スロウハイツの神様では、赤羽環の世界観や考えをたっぷり知る事が出来る。こうやって、みんな辻村深月の世界観に魅力されていくのだろう。

 

パラレルワールドを考える事がある。

仮に、僕が「スロウハイツの神様」を先に読み、赤羽環という人物を知っていたらどうなっていただろう。その時は「島はぼくらと」を読んで、赤羽環と再会を果たすはずだ。そして、どちらの世界でも、赤羽環の姿に結局は魅了されるのだろう。

 

登場したキャラクターが別の作品で現れる。この高揚は言い表せない。

では、スロウハイツの神様(上)を読んだ感想に移りたい。

 

辻村深月は、人物の心情を表すのがとてつもなく上手い

 スロウハイツに住む住人は、皆、何かを求めている。

狩野や、正義、森永は売れない作家、漫画家や画家である。そんなスロウハイツに住む住人で全てを持っているのが、赤羽環だ。そして、環も敵わないと思っているのが、チヨダコーキである。

 

 冒頭の始まりはなんとも奇妙な始まりだ。

「チヨダコーキの作品で人が死んだ」

 辻村深月の世界観を現すには「死」は重要な単語である。

そして、冒頭のページには、すぐこの言葉が現れる。チヨダコーキの作品が死と結びつけてしまった。この事実だけで引き込まれていくはずだ。

 

 そして、辻村深月の真骨頂は、人物の心情を綺麗に表していく事だ。

それぞれの立場のキャラクターの心を綺麗に洗い出していく。その心の葛藤を見れるのが楽しくてしょうがないし、小説を読む楽しさの一つだ。

 

 

売れない作家、漫画家、画家。そして、自分の作品で命を落とした者も現れた作家。それぞれの立場の視点をはっきりと捉える事が出来る。

 

「自分が情けなくて、どうしようもなくて、それで好きな人に会えないっていう感情は、実際に存在するんだ」

 

「見ず知らずの他人の空気にどうどうと穴を開けるのがうまい」

 

「人間は自分が計算していればしているだけ、相手の計算やごまかしを敏感に読むようになる」

 

 これらの言葉は僕が好きになった言葉である。

この文章を、物語を読みながら、それぞれの文脈に合わせて読むのが楽しいのだ。

 

 物語の内容にはあまり触れるつもりはなかった。まだ(上)しか読んでいないしね。

でも、確実に物語は加速し始めている。それは、赤羽環が受け取った郵便物を見て、

環が「私は道化だ」と発したからだ。とにかく、物語がどうなるか楽しみでならない。

 では、今日はこんなところです。

 

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)